砂漠にありえないこと

旅行を通してサハラを越えたのは、2回です。
一度目は、エチオピアから、ケニヤに抜けるルート

2度目は、ニジェールからアルジェリアへのルート

このルート上で、砂漠にありえない奇跡に遭遇した。
エチオピアからは、ケニヤに入って程なく、道のど真ん中にカメラが落ちていた。
72年頃は、未だカメラは貴重品である。とはいってもバカチョンカメラにみたいなものであるが。

しかし、私はその後、タンザニアの日本大使館内で持っていたカメラ2台を盗まれる。
その為、始めの東アフリカ(エチオピア・ケニヤ・タンザニア)の写真が残っていない。
タンザニアのダレッサラムからの写真はこの奇跡のカメラに救われた。


タマナラセットからインサラに向かう行程は、砂も深く、押して進むにも、水や食料を合わせると
80kg近くある自転車の横に立って押し進むことは不可能であった。

ハンドルを後にして、バックで進行方向に押す事でなんとか進むしかない。
そんな時に、こんなに広い砂の道なのに、自分をめがけて、トラックの軍団が(コンボイを組んで)
進んでくる。パンク修理していた時に出くわしたのだが、相手は止まればスタックするのはわかるが、
道で修理しているのはお構いなしで、あわてて轍の外に引き出すと、通過していった。
完全に轢殺すつもりで走っている。まあ、引いたとしても、誰も捕まえるものは居ないだろうし。

パンク修理はゴムのりが乾く前に貼り付けないとひっつかない。
過酷なパンク修理だった。

そんな騒々しい瞬間のふれ合いも、1日中誰にも会わない日があるわけだから、人恋しい慰めにもなる。

そう思いながら自転車を押し続けると、砂の上にオレンジが2個落ちていた。
だだっ広い砂漠の水平線と、あの皮をむいて絞って飲むオレンジである。
果実は、中に赤い血のような粒が少し混じる美味しいオレンジである。
これを奇跡と言わず何と言おうか!!。

まあ、この日は2台のトラックが追い越していった。トラックの上に山盛り乗った人々の中に手が滑ったのが居たのだろう。
もし、私を見て恵んでやろうと落として励ましてくれる行為であれば、嬉しい限りである。